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健康診断 2026.01.09

会社の健康診断はどこまで費用負担?対象者・自己負担を解説

「会社の健診って無料のはずでは?」「追加検査をすすめられたけど、これも会社持ち?」——「健診を受けている時間の給料は出るの?」健診シーズンになると、費用や労務まわりの扱いで迷う方は少なくないと思います。
結論から言うと、会社に実施義務がある“法定健診”は原則会社負担。一方で、本人の希望で足す検査や、健診後に医療機関で行う検査は自己負担になりやすい、というのが大枠です。

ただし、対象者(正社員・パート・派遣・役員・家族)や、再検査が「健診の範囲の確認」なのか「病気の診断のための精密検査」なのかで扱いが変わることがあります。さらに、受診時間中の賃金の扱いや、福利厚生費として経費計上するための条件まで押さえておくと、担当者として迷わず対応できます。

本記事では、法定健診の基本ルールから、対象者別の負担区分、賃金・経費処理の実務ポイントまで、まとめて整理していきます。

会社の健診は義務?法的位置づけをざっくり整理

事業者(会社)は、労働者に対して医師による健康診断を実施する義務があります。代表的なのが、雇い入れ時の健康診断(雇入時健診)と、年1回の定期健康診断(定期健診)です。

厚生労働省のQ&Aでは、労働安全衛生法等で義務づけられている健康診断の費用は、事業者が負担すべきもの、という整理が示されています。

事業者に実施義務があるのは「法定健診」

法定健診とは、労働安全衛生法によって会社に実施が義務付けられている健康診断のことです。雇入時健診と定期健診がその代表例で、これらは「会社がやらなければならない健診=会社負担」が基本線になります。

義務違反には罰則の可能性も

この実施義務に違反した場合、罰則の対象となる可能性がある点も押さえておきたいポイントです。健診を「やってもやらなくてもいい福利厚生」ではなく、法律上のルールとして捉えておく必要があります。




会社負担と自己負担の境界

会社の健診にかかる費用は、大きく「会社負担になるもの」と「自己負担になりやすいもの」に分けられます。どちらに該当するかは、契約範囲や検査の目的によって判断が変わります。

会社負担になるもの

1.法定の一般健康診断

・雇入時健診(雇い入れ時)
・定期健診(原則として1年以内ごとに1回)

2.法定の特殊健康診断(該当する有害業務に従事する場合)
派遣の場合などは「誰が実施主体か」で費用負担者が分かれます(後述)。

自己負担になりやすいもの

  • 法定項目にない任意追加(例:腹部エコー、腫瘍マーカーなど)
  • 人間ドック(任意型)
  • 健診後の精密検査(医療機関で診断目的に行う検査)
  • 自治体のがん検診で、対象外・受診間隔外などの条件を外れて受ける場合(原則として制度適用外)

ポイント

ここでのコツは、「会社の契約メニューの中か」「本人が希望して足したものか」「診断・治療のための医療行為か」で分けて考えることです。

“法定健診”の中身:何が会社健診に含まれる?

法定の一般健診は、ざっくり言うと「働くうえでの健康状態を定期的にチェックする基本セット」です。雇入時健診と定期健診では、法律で定められた検査項目が異なります。

雇入時健診の法定項目

雇入時健診では、既往歴・業務歴、自覚症状・他覚所見、身体計測、視力・聴力、胸部エックス線、血圧、尿検査、血液検査(貧血・肝機能・脂質・血糖)、心電図などの項目が列挙されています。

定期健診の法定11項目

定期健診(安衛則第44条相当)も同様の考え方で、代表的な項目として11項目が定められています。「今回受けた項目は法定健診の範囲内か、それとも追加のオプションか」を切り分ける基準として、この項目一覧を押さえておくと判断しやすくなります。一方、腹部エコーや腫瘍マーカーなどは、一般に法定項目ではない「追加(オプション)」として扱われやすく、本人負担になりやすい領域です。

パート・派遣・役員・家族:対象者ごとの費用負担

会社の健診は、雇用形態や立場によって「誰が実施義務を負い、誰が費用を負担するか」が異なります。ここでは正社員以外の代表的な立場ごとに整理します。

パート・アルバイト

ポイントは「常時使用する労働者」に当たるかどうかです。目安として、雇用期間が1年以上見込み(または期間の定めなし/1年以上の雇用実績)、週所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上、などの考え方が示されています。対象に当たる場合、定期健診は会社の実施義務・会社負担が基本です。

派遣労働者

派遣は役割分担が明確です。一般健診(雇入時・定期)は派遣元が実施義務、費用も派遣元負担。特殊健診(有害業務)は原則として派遣先が実施義務、費用も派遣先負担となります。

役員

役員は労働者ではないため、原則として法定健診の実施義務・会社負担の対象外です。ただし、業務執行を行う役員が従業員と同様の労働実態にある場合など、労働者性が認められるケースでは対象となることがあります。役員のみを対象にした高額な健診を会社負担にすると、給与課税の対象と判断される可能性がある点にも注意が必要です。

従業員の家族

従業員の家族(配偶者・被扶養者など)は、会社に実施義務のある法定健診の対象外です。原則として自己負担となりますが、加入している健康保険組合や協会けんぽの補助制度を利用できる場合があります。

フリーランス・個人事業主

法定の会社健診の枠組みではないため、基本は自己手配・自己負担になります。ただし、加入している保険者の補助や自治体制度を使って負担を軽くする余地はあります。

「同日に追加した検査」は誰の負担?

実務上いちばん揉めやすいのがここです。会社の健診と同じ日に「ついでに」オプション検査を追加すると、会計が混ざって分かりにくくなりますが、原則で考えると整理できます。

会社契約の健診コースに含まれる場合

会社が指定した健診コース(会社契約)に含まれる場合は、会社負担となります。

本人が希望して追加した場合

本人が希望して追加したオプションは本人負担(受付で追加分だけ支払いになることが多い)となります。ただし、会社が「このオプションも全員につける」と決めて契約している場合は会社負担になり得ます。最終判断は社内規程(福利厚生や健診規程)と、健診機関との契約内容で決まります。

再検査・精密検査は自己負担?ここは“言葉の違い”が大事

健診後に「再検査」「精密検査」と言われたとき、費用の扱いは一律ではありません。健診の範囲内での確認なのか、医療としての診断なのかで扱いが変わります。

健診の範囲内で“検査値を確定させる再検査”

たとえば一時的な数値ブレを確認するために、同じ項目をもう一度測るような「再検査」は、健康診断の範囲内として事業者負担が望ましい、という整理が示されています。
ここは会社・健診機関の運用にもよるので、「これは健診の再検査として扱われるか(会社契約の範囲か)」を確認するとスムーズです。

病気の有無を判断する“診断目的の精密検査”

一方、医療機関で診断を目的に行う検査(画像検査や内視鏡など)は、一般に保険診療として進むことが多く、自己負担(通常の医療費の自己負担分)が発生します。
ただし例外として、一定条件に当てはまる場合に、労災保険の「二次健康診断等給付」で無料受診できる制度があります(年度内1回、無料で二次健診と特定保健指導を受けられる旨が示されています)。

つまり、「会社健診の続きとしての再検査」なのか、「医療としての精密検査」なのかで、負担の考え方が変わります。

労災の「二次健康診断等給付」で無料受診できるケースも

一定条件に当てはまる場合、労災保険の「二次健康診断等給付」で無料受診できる制度があります。年度内1回、無料で二次健診と特定保健指導を受けられる旨が示されています。

健康診断を受ける時間の賃金は支払われる?

健診の費用だけでなく、「受診している時間の給料はどうなるのか」も担当者が判断に迷いやすいポイントです。一般健診と特殊健診では、賃金支払いの考え方が異なります。

一般健診の受診時間は「支払う努力義務」

一般健康診断(雇入時健診・定期健診)については、法律上、受診時間中の賃金支払いを会社に義務付ける規定はありません。ただし、健康の確保は本来会社にも利益があるものという考え方から、受診時間分の賃金を「支払う方が望ましい」という整理が行政のQ&A等で示されています。

特殊健診の受診時間は「賃金支払いが必要」

特殊健康診断(有害業務に従事する労働者向け)は、業務の一環として位置づけられるため、受診時間中の賃金支払いが必要とされています。自社の就業規則や賃金規程で「健診時間は有給扱いとする」といった定めがある場合は、その規定が優先されます。


人間ドック・保険者健診を使うと、自己負担はどこまで下がる?

人間ドック自体は任意で、会社負担に必ずなるものではありません。けれど「保険者の補助」をうまく使うと、自己負担が想像より軽くなることがあります。

代表例として、全国健康保険協会(協会けんぽ)の生活習慣病予防健診は、自己負担額の上限が示されており、令和8年度の一般健診は「最高5,500円」などと掲載されています。付加健診や乳がん・子宮頸がん検診等の追加も上限額が示されています。
「会社の法定健診+保険者の補助健診」をどう組み合わせるかは、重複を避けるのがコツです(同じ項目を二重に払わない)。

大阪で受けるなら:自治体がん検診も“条件内なら”安い

大阪市のがん検診は、対象年齢や受診間隔などの要件のもとで、自己負担額が比較的低額に設定されています(例:大腸がん検診300円、胃がん検診500円等の記載がある資料があります)。
逆に言うと、要件から外れて受ける場合は制度の対象外になり、全額自己負担になり得ます。受診前に「年齢・間隔・実施場所(取扱医療機関など)」を確認しておくと安心です。

健康診断費用を経費にするときの注意点

会社が健診費用を負担する場合、税務上は「福利厚生費」として非課税で処理できるケースが一般的です。ただし、無条件で認められるわけではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。

福利厚生費として計上する3つの条件

全従業員(または一定の条件を満たす希望者全員)を対象としていること、会社が医療機関へ直接費用を支払っていること、金額が社会通念上、著しく高額でないことなどが挙げられます。役員だけ、あるいは一部の従業員だけを対象にした高額な健診は、給与として課税される可能性がある点に注意が必要です。

消費税は「課税仕入」として扱う

健康診断・人間ドックにかかる費用は消費税の「課税仕入」として扱われます。経理処理を行う際は、勘定科目とあわせて消費税区分も確認しておくとスムーズです。

会社の健康診断の費用負担についてのよくある質問

ここでは、会社の健康診断の費用に関して、担当者からよく寄せられる質問をまとめました。

従業員が受診する機関を指定した場合の費用負担は?

会社が指定した健診機関以外を従業員が希望した場合、差額や追加費用は本人負担となるのが一般的です。事前に社内規程で受診可能な機関を定めておくとトラブルを防ぎやすくなります。

健康診断中の給与の扱いはどうなる?

一般健診の受診時間について賃金支払いの法的義務はありませんが、支払う方が望ましいとされています。特殊健診は賃金支払いが必要です。

退職予定の従業員の健診費用も会社が負担する必要がある?

退職予定であっても、在籍中に受診義務のタイミングが来る場合は、通常の従業員と同様に会社負担が原則です。

会社が費用を負担してくれない場合はどうすればいい?

法定健診の費用を従業員に負担させることは、労働安全衛生法の趣旨に反する可能性があります。まずは社内の人事・総務部門に確認し、改善されない場合は労働基準監督署への相談も選択肢になります。

会社の健康診断費用を正しく理解しよう

法定健診(雇入時・定期・特殊)は原則会社負担。任意の追加検査・人間ドックは原則本人負担ですが、社内規程や保険者補助で変わります。健診後の「再検査」は、健診範囲の確認か診断目的の精密検査かで扱いが分かれ、労災の二次健診給付など例外もあります。
対象者は、パート・派遣に加えて役員・家族まで含めて確認しておくと安心です。受診時間中の賃金や、福利厚生費として経費計上する際の条件まで押さえておけば、担当者として迷わず対応できるはずです。
迷ったら、

①会社の健診案内(契約範囲)
②加入保険者の補助制度
③自治体検診の対象条件

の順で確認するのが最短ルートです。

監修医師 赤松 敬之
この記事を監修した医師
赤松 敬之 医師(あかまつ たかゆき)
医療法人 星敬会 理事長/西梅田シティクリニック

 

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