健康診断
特殊健康診断ってなに?

労働安全衛生法によって、企業は一般健診だけでなく特殊健康診断の実施も義務付けられています。
特殊健康診断は一般健診と異なり、受診対象となる従業員が複数に分けられ、実施要項も異なります。
本記事では特殊健康診断の種類について解説します。
特殊健康診断ってなに?
「特殊健康診断」とは、労働安全衛生法が定める『特に有害であるといわれている業務または特定の有害物質を取り扱う業務』に従事する従業員を対象に実施する健診のことです。
一般健診の「特定業務従事者の健康診断」とは別になります。
特殊健診の対象業務とは?
特殊健康診断を実施しなければならない業務には、以下の7種類があります。
- 高気圧業務
- 放射線業務
- 特定化学物質業務
- 石綿業務
- 鉛業務
- 四アルキル鉛業務
- 有機溶剤業務
これらの業務は、労働安全衛生法施行令に定められています。
一定の特定化学物質業務・石綿業務に関しては、現在その業務に従事していなくても従事歴がある場合にはこの健診を実施する必要があります。
その他、情報機器作業、騒音・振動工具作業など、労働安全衛生法では義務ではありませんが、行政指導により特殊健康診断の実施が奨励されています。
特殊健康診断の種類
一般健康診断と同様、特殊健康診断の中にも様々な種類のものがあり、それぞれの有害業務に対する検査の他にじん肺健診、歯科医師による健診があります。
対象者に該当する場合には健診を受けなければなりません。
①高気圧業務
- 対象者
高圧室内業務または潜水業務に常時従事する労働者 - 実施期間
6ヶ月以内毎に1回 - 特殊な検査項目
既往歴・高気圧業務歴の調査/自覚症状や他覚症状の有無/運動機能検査/聴力検査/血圧測定/肺活量測定
②放射線業務健診
- 対象者
放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者 - 実施期間
6ヶ月以内毎に1回 - 特殊な検査項目
被ばく歴の有無の検査/血液検査(白血球数や白血球数百分率、赤血球数やヘマトクリット値)/白内障に関する眼の検査/皮膚検査
③特定化学物質健診
- 対象者
特定化学物質を製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者および過去に従事したことのある在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る) - 実施期間
6ヶ月以内毎に1回 - 特殊な検査項目
業務経歴・作業条件の調査/鼻腔・皮膚所見の有無の検査/血圧測定/握力検査/血液検査/尿検査/胸部X線検査/肺機能検査
⑤鉛健診
- 対象者
鉛業務に常時従事する労働者 - 実施期間
6ヶ月以内毎に1回 - 特殊な検査項目
業務経歴・作業条件の調査/鉛による自覚症状や他覚症状の既往歴の調査/鉛による症状の有無の検査/血液検査/尿検査
⑥四アルキル鉛健診
- 対象者
四アルキル鉛業務に常時従事する労働者 - 実施期間
3ヶ月以内毎に1回 - 特殊な検査項目
業務経歴・作業条件の調査/記憶障害その他の神経障害または精神症状の有無の検査/血圧測定/血色素量や全血比重の検査/尿検査(コプロポルフィン)
⑦有機溶剤健診
- 対象者
有機溶剤業務に常時従事する労働者 - 実施期間
6ヶ月以内毎に1回 - 特殊な検査項目
業務経歴・作業条件の調査/有機溶剤による健康障害の既往歴の調査/有機溶剤による自覚症状や他覚症状の調査/尿検査/肝機能検査/貧血検査/眼底検査
⑧じん肺健診
- 対象者
粉塵作業や石綿に関する粉塵作業に常時従事する労働者および過去に従事したことのある在籍労働者 - 実施期間
3年以内毎に1回 - 特殊な検査項目
業務経歴の調査/胸部X線検査/結核精密検査/肺機能検査
⑨歯科医師による健診
- 対象者
特定物質(塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄燐等その他)のガス、蒸気または粉塵を発散する場所における業務に常時従事する労働者 - 実施期間
6ヶ月以内毎に1回 - 特殊な検査項目
口腔顔面の皮膚粘膜状況や歯の状況、顎骨に関する検査
特殊健診実施後の対応
健診結果より、従業員に何らかの異常や健康被害が生じていた場合には、企業は様々な対処をする必要があります。
従業員に対して
- 就業場所の変更
- 作業の転換
- 働時間の短縮
作業場所に対して
- 施設、設備、作業工程、作業方法の見直しや改善
- 作業環境の測定
作業環境管理や作業環境測定に関しては、労働安全衛生法にて作業場の種類や測定項目、測定回数等が細かく定められているため、それらに沿った管理や測定が求められます。
従業員が再検査や精密検査が必要と判断された場合には適切な対応をとりましょう。
有害業務から体を守り健康に働くために
特に有害で影響のある業務に従事していると、十分な対策を取っていたとしても防ぐことができない病気もあるため、定期的な健康診断の受診が重要になってきます。
労働安全衛生法により、企業が対象となる従業員に健診を実施しなかったり、受診機会を設けない場合には、違法行為として50万円以下の罰金等が科せられる恐れがあります。
また、従業員側にも受診義務があり、健康に働くためには定期的な健診が大切です。
企業は健診の実施を、従業員は健診の受診を必ず行うようにしましょう。
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