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大腸がんが日本で増加中?予防と早期発見の重要性

近年、日本では大腸がんの患者数が増加しています。
2018年の国立がん研究センターのデータによると、大腸がんの罹患率は年齢が上がるにつれて高くなり、特に男性のほうが罹患率・死亡率ともに女性より2倍高いというデータが出ています。
大腸がんは、進行するほど症状が悪化し、治療が困難になる疾患です。
そのため、早期発見・早期治療が極めて重要です。
本記事では、大腸がんの増加の背景、症状や検査方法について解説します。
大腸がんの症状に当てはまる場合は、速やかに医療機関を受診し、専門医の診療を受けましょう。
大腸がんとは

大腸がんとは、大腸表面の粘膜から発生する悪性腫瘍の総称です。
大腸の長さは1.5〜2m程度であり、大きく分けると、結腸と直腸に分類されます。
大腸がんは大腸の粘膜に発生し、正常な粘膜から直接がんが発生する場合と、ポリープ(良性の腫瘍)が大きくなる過程でがんになる場合があります。
日本人では、直腸やS状結腸など、肛門に近い部位にがんが発生しやすい傾向があります。
大腸がんの危険因子
- 肥満
- 加齢
- 過度の飲酒
- 喫煙
- 運動不足
これらの要因に心当たりがある場合は、生活習慣の見直しを検討しましょう。
日本で大腸がんが増加している背景

日本における大腸がんの増加は、食生活の変化が一因とされています。
戦後、日本人の食事は欧米化し、赤身肉や高脂肪食の摂取が増加しました。
これにより、大腸がんのリスクが高まっていると考えられます。
ハワイやアメリカ本土に移住した日本人を対象とした研究では、移住後に胃がんの発生率が減少し、大腸がんの発生率が増加する傾向が確認されました。
この結果から、大腸がんの発生には、遺伝的・人種的な要因よりも、食事などの環境要因が大きく関係することが明らかになっています。
日本における大腸がんの死亡数が多い理由
日本で大腸がんの死亡者数が多い主な理由は、検診の受診率が低いことです。
1992年より便潜血検査2日法による大腸がん検診が始まりましたが、2016年時点での受診率は約40%にとどまっています。
一方、アメリカでは10年に1回の頻度で実施される全大腸内視鏡検査を主とした大腸がん検診がおこなわれ、2015年には50〜75歳の62.9%が検査を受診しています。
日本の医療技術は世界的に見ても高水準であり、大腸がんの治療成績も優れています。
しかし、検診受診率の低さが早期発見の妨げとなり、結果として死亡率の高さにつながっていると考えられます。
大腸がんの主な症状
大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどありませんが、がんがある程度の大きさになると、以下の症状が現れることがあります。
- お腹の張り
- お腹のしこり
- 便が細い
- 体重減少
- 貧血
- 腹痛
- 嘔吐
- 血便
- 下血(肛門から血が出る)
大腸は長い臓器であるため、どの部位にがんが発生するかによって、症状の出方が異なります。
例えば、結腸の右側(小腸に近い部分)にがんができた場合、症状が出にくいことがあります。
一方、肛門に近い左側の結腸や直腸にがんができた場合、血便や便通異常、腹痛などの症状が現れやすくなります。
これらの症状が続く場合は、早めに消化器科や肛門科を受診しましょう。
40歳を過ぎたら定期的な大腸検査を

大腸がんのリスクは、40代以降で高まります。
自覚症状がなくても、定期的な検査を受けることで早期発見・早期治療が可能となります。
主な検査方法
便潜血反応検査
便潜血反応検査は、腫瘍からのわずかな出血を検出する検査です。
2日間に分けて便の採取をおこない、検査結果が「要精検」となった場合は、腸内視鏡検査を実施する必要があります。
注腸検査
注腸検査は、肛門から細い管を挿入し、造影剤(バリウム)と空気を入れて大腸内をX線で撮影する検査です。
大腸の壁に発生した病変やがんの位置、大きさや形などを判断しやすいといえます。
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査は、内視鏡を肛門から挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体を詳しく観察する検査です。
病変が発見された場合、その一部もしくは病変全体を採取し、病理検査を実施します。
病変が大腸粘膜の表面にとどまっている場合、内視鏡で切除できます。
病理検査
病理検査は、内視鏡で採取した組織を薄く切り、プレパラートに乗せて顕微鏡で観察する検査です。
内視鏡でがんを切除した場合は病理検査をおこない、がんの深さや進行度合い、がん組織の種類などを明らかにします。
その他
大腸がんとその周囲の臓器の位置関係やがんの広がり具合、リンパ節転移の有無などを調べるために、CT検査・MRI検査・腹部超音波検査・PET検査などを実施します。
定期的な検査により、大腸がんを早期に発見し、治療することが可能となります。
健康を守るためにも、積極的に大腸がん検診を受けましょう。