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貧血とは?症状や原因、種類、検査・治療・予防法を医師監修で解説

めまいやふらつき、体のだるさ、動悸や息切れを感じることはありませんか。こうした症状は「貧血」のサインかもしれません。貧血とは、血液中のヘモグロビンが減少し、全身が酸欠状態になることでさまざまな不調を引き起こす状態です。単なる鉄分不足だけでなく、内臓の疾患が隠れているケースもあるため、自己判断せずに正しく理解することが大切です。
本記事では、貧血の症状や原因・種類といった基礎知識に加え、健康診断ではわかりにくい「隠れ貧血」、放置した場合のリスク、受診すべき診療科、食事による予防・改善方法まで、貧血について知っておきたい情報を網羅的に解説します。
貧血とは

貧血とは、血液中の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の量が減少した状態のことをいいます。ヘモグロビンには酸素を全身へ運ぶ役割があり、この量が減ることでさまざまな不調が現れます。ここでは、貧血の定義とヘモグロビンの役割について解説します。
貧血の定義
貧血とは、血液中の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の量が減少した状態のことをいいます。単に赤血球の数が少ないというよりも、正確にはヘモグロビン濃度の低下を指す言葉です。
ヘモグロビンの役割
ヘモグロビンには、肺で取り込んだ酸素を全身の細胞へ届ける役割があります。ヘモグロビンが不足すると、酸素が体のすみずみまで行き渡らなくなり、酸欠状態となってさまざまな不調が現れます。
貧血の症状|セルフチェックリスト
貧血になると、体内が酸欠状態になることでさまざまな不調が現れます。ここでは代表的な症状をセルフチェック形式で紹介しますので、当てはまるものがないか確認してみましょう。
めまい・立ちくらみ
貧血の代表的な症状のひとつが、めまいや立ちくらみです。急に立ち上がったときにふらつきを感じる場合、脳への酸素供給が不足している可能性があります。
動悸・息切れ
体内の酸素不足を補おうと心臓が働きを強めるため、少し動いただけで動悸や息切れを感じやすくなります。階段の上り下りなどで普段より息が上がる場合は注意が必要です。
倦怠感・疲れやすさ
酸素が全身に行き渡らないことで、慢性的なだるさや疲れやすさを感じることがあります。しっかり休んでも疲れが取れない場合は、貧血が原因となっている可能性があります。
顔色が悪い(蒼白)
血液中のヘモグロビンが減ると、顔色が青白く見えることがあります。周囲から顔色の悪さを指摘された場合は、貧血のサインかもしれません。
頭痛
脳への酸素供給が不足すると、頭痛が生じることもあります。原因不明の頭痛が続く場合、貧血が関係している可能性も考えられます。
病院受診の目安となる症状
上記の症状が複数当てはまる場合や、日常生活に支障が出るほどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。特に動悸や息切れが強い場合、貧血以外の疾患が隠れている可能性もあります。
貧血の原因と種類
貧血の原因はさまざまですが、「赤血球・ヘモグロビンが作れなくなる」「赤血球・ヘモグロビンがなくなる」このふたつが大きいとされます。
赤血球やヘモグロビンが作れない原因には、これらを作るために必要な栄養素である鉄・亜鉛・葉酸・ビタミンB12などが不足していること、骨髄の疾患によって赤血球の産生が正常に行われなくなること、腎臓の疾患によって造血ホルモンの産生が正常に行われなくなり、骨髄に血液を作る指示ができなくなることなどが挙げられます。
赤血球やヘモグロビンがなくなる原因には、がんや胃潰瘍といった疾患による出血や月経異常など過度な出血や持続的な出血があった場合、免疫の異常や細菌感染、激しい運動などによって赤血球が破壊される場合などがあります。
貧血には主に以下の4種類があります。
①鉄欠乏性貧血
これは最も頻繁にみられる貧血です。
鉄欠乏性貧血は赤血球に含まれるヘモグロビンの合成に必要な鉄が欠乏してしまうことによって生じる貧血です。
鉄分が不足してしまうと、赤血球が小さくなり、ヘモグロビンの含有量も低下します。
それに伴って酸素の運搬能力も低下し、酸欠状態となってしまうのです。
食べ物などから摂取された鉄は、肝臓で貯蔵されます。
貧血にレバー(肝臓)が良いとされているのは、鉄やその他の栄養素が多く貯蔵されているためです。
鉄の欠乏は、偏った食生活や無理なダイエット、疾患や薬品の副作用による鉄分の吸収障害などが原因とされています。
他にも成長期の子供や妊娠中の女性、持続的な出血がある場合には鉄が欠乏しやすいなど、鉄欠乏性貧血は「鉄分をあまり摂取していないから」という原因だけではなく、様々な理由で発症してしまうのです。
②巨赤芽球性貧血
巨赤芽球性貧血は、主にビタミンB12や葉酸の不足などによって起こる貧血です。ビタミンB12欠乏の原因の一つとして、悪性貧血があります。
ビタミンB12の欠乏は、自己免疫疾患によって壁細胞が減少し、ビタミンB12を吸収するのに必要な内因子という物質の分泌量が低下することで、ビタミンB12が吸収できなくなることが主な原因とされます。
葉酸の欠乏は、偏った食生活や過度なアルコール摂取、消化器疾患による吸収不良などがあります。
③再生不良性貧血
再生不良性貧血は、血液中の赤血球・白血球・血小板のすべてが減少してしまう疾患です。
骨髄中の造血幹細胞が何らかの原因で傷ついたり抑制されることで骨髄が機能不全になると、赤血球・白血球・血小板の減少が起こります。
これは難病法で指定された指定難病のひとつで、ほとんどが後天性と言われています。
まれに生まれつき遺伝子の変異があって起こる先天性再生不良性貧血の場合もあります。
後天性再生不良性貧血は多くの場合が原因不明の特発性とされています。
④溶血性貧血
溶血性貧血は、赤血球が外力や病気によって破壊され、ヘモグロビンが血管内に溶け出すことで生じる貧血です。
溶血とは、赤血球を覆っている膜が破れ、血管内にヘモグロビン等が流れ出すことをいいます。
これは、激しい運動など外力によって赤血球が壊される、赤血球を壊す免疫がつくられてしまう、赤血球自体に問題があるといったことが原因で発症します。
赤血球に問題があって起こることは稀ですが、遺伝子の突然変異によって血球成分が免疫に対して過敏になると溶血を起こしてしまいます。
溶血性貧血になると、黄疸や褐色尿などがみられます。
⑤そのほかの貧血(二次性貧血・腎性貧血)
上記4つ以外にも、がんや慢性炎症性疾患にともなって起こる二次性貧血や、腎臓の機能低下により造血ホルモンが十分に作られなくなる腎性貧血があります。基礎疾患の治療とあわせて、貧血への対処が必要になるケースです。
「隠れ貧血」にも注意
健康診断でヘモグロビン値に異常がなくても、実は貧血に近い状態にあるケースがあります。これは「隠れ貧血」と呼ばれ、見逃されやすい不調のひとつです。
隠れ貧血とは
隠れ貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度は基準値内であるものの、鉄の貯蔵量を示す「フェリチン」が不足している状態を指します。ヘモグロビンの材料となる貯蔵鉄が少ないため、体はいずれ本格的な鉄欠乏性貧血に移行しやすくなります。
健康診断ではわかりにくい理由
一般的な健康診断の血液検査では、ヘモグロビン濃度は調べますが、フェリチン値まで測定しないことがほとんどです。そのため、健康診断で「異常なし」と判定されても、めまいやだるさなどの症状が続く場合は、隠れ貧血の可能性を考えてみる必要があります。
貧血を放置するとどうなる?
貧血の症状を「体質だから」「疲れているだけ」と放置してしまう方も少なくありません。しかし、貧血を放置すると、体にさまざまな負担がかかり、重篤な健康被害につながるおそれがあります。
心臓や脳への負担
貧血が続くと、酸素不足を補うために心臓がより多くの血液を送り出そうとするため、心臓に大きな負担がかかります。この状態が長く続くと、動悸や息切れが悪化するだけでなく、心臓そのものに負荷がかかり続けることになります。また、脳への酸素供給も不足するため、集中力の低下や記憶力の低下につながることもあります。
嚥下障害など重篤な合併症のリスク
貧血を放置すると、食べ物を飲み込みにくくなる嚥下障害を発症することもあります。また、慢性的な酸欠状態が続くことで心筋梗塞などのリスクが高まる場合もあるため、症状に心当たりがある場合は早めの対処が重要です。
貧血かも?と思ったら何科を受診すべき?
めまいやだるさなどの症状が続き、貧血が疑われる場合、どの診療科を受診すればよいか迷う方も多いのではないでしょうか。ここでは、受診先の目安と検査でわかることを解説します。
内科・血液内科の受診が基本
貧血が疑われる場合は、まず内科を受診するのが一般的です。血液検査の結果、貧血の原因が特定の病気による可能性がある場合は、血液内科など専門の診療科を紹介されることもあります。症状が重い場合や、原因不明の貧血が続く場合は、はじめから血液内科を受診するのもひとつの方法です。
健康診断・血液検査でわかること
貧血の有無は、血液検査によるヘモグロビン濃度(血色素量)の測定で判断されます。健康診断の結果でヘモグロビン濃度が基準値を下回っている場合、「貧血」と診断されます。ただし、前述の「隠れ貧血」のように、通常の健康診断だけでは見つけにくいケースもあるため、症状が続く場合は追加の検査を相談してみましょう。
貧血の治療方法
貧血の治療方法は、貧血の種類や原因によって異なります。鉄分などの不足を補うだけで改善する場合もあれば、貧血の原因となっている病気そのものの治療が必要になる場合もあります。
健康診断などで貧血を指摘された場合は、自己判断でサプリメントなどを摂取するだけでなく、医療機関で原因を確認したうえで適切な治療を受けることが大切です。
鉄欠乏性貧血は鉄剤などで治療する
鉄欠乏性貧血では、体内で不足している鉄を補う治療が基本です。食生活の改善に加えて、必要に応じて医師から鉄剤が処方されます。
鉄剤による治療では、血液中のヘモグロビン値が改善した後も、体内に蓄えられている鉄が十分に回復するまで服用を続けることがあります。服用期間や量については自己判断せず、医師の指示に従いましょう。
貧血の原因に応じた治療を行う
鉄欠乏以外が原因の貧血では、それぞれの原因に応じた治療が必要です。
たとえば、ビタミンB12や葉酸の不足による貧血では、不足している栄養素を補います。また、消化管からの出血や婦人科疾患などが貧血の原因となっている場合は、原因となる病気の治療も必要です。
貧血は原因によって治療方法が異なるため、症状が続いている場合や健康診断で異常を指摘された場合は、医療機関を受診して原因を確認しましょう。
貧血の予防・改善方法
貧血の多くは、日々の食生活や生活習慣を見直すことで予防・改善が期待できます。ここでは、意識したい栄養素や生活習慣のポイントを紹介します。
鉄分を含む食事を意識する
鉄分は、ヘモグロビンの合成に欠かせない栄養素です。レバーや赤身の肉、魚介類、ほうれん草やひじきなどに多く含まれます。特に、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」は、野菜に含まれる「非ヘム鉄」よりも体内に吸収されやすいという特徴があります。
たんぱく質・ビタミンB12・葉酸も一緒に摂る
鉄分だけでなく、ヘモグロビンの材料となるたんぱく質、赤血球の合成に関わるビタミンB12や葉酸も併せて摂ることが大切です。ビタミンB12は魚介類やレバーに、葉酸は緑黄色野菜や豆類に多く含まれています。また、ビタミンCを一緒に摂ると鉄の吸収率が高まります。
生活習慣の見直し(睡眠・運動)
十分な睡眠をとり、体を休める時間を確保することも貧血の予防につながります。また、適度な運動は血流の改善に役立ちますが、過度な運動はかえって貧血を引き起こす場合があるため、無理のない範囲で行うことが大切です。
貧血についてのよくある質問
貧血に関して、読者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
貧血は自然に治りますか?
鉄欠乏性貧血の場合、原因となっている鉄不足を食事やサプリメントで改善することで、自然に回復していくケースが多くあります。ただし、出血性の疾患や骨髄の異常など、ほかの病気が原因となっている場合は、原因疾患の治療が必要です。症状が続く場合は自己判断せず、医療機関を受診しましょう。
貧血の症状が続くとどうなりますか?
貧血を放置すると、心臓や脳への負担が増し、動悸・息切れの悪化や集中力の低下につながるおそれがあります。また、まれに嚥下障害などの合併症を引き起こすこともあるため、症状が続く場合は早めに受診することが大切です。
健康診断で「貧血」と言われたらどうすればいい?
健康診断でヘモグロビン濃度の低下を指摘された場合は、自己判断で市販薬やサプリメントに頼るのではなく、内科を受診し、原因を調べてもらうことをおすすめします。原因によって適切な対処法が異なるため、まずは血液検査などで原因を特定することが重要です。
貧血のサインを見逃さず早めに受診しよう
めまいやふらつき、だるさ、動悸・息切れといった症状は、貧血のサインであることが少なくありません。貧血には鉄欠乏性貧血をはじめ、悪性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血などさまざまな種類があり、原因によって適切な対処法も異なります。
また、健康診断のヘモグロビン値だけでは見つけにくい「隠れ貧血」の可能性もあるため、気になる症状が続く場合は自己判断せず、内科などの医療機関を受診しましょう。早めに原因を突き止め、適切な対処をすることが、健康な毎日を維持することにつながります。